鬼怒川に向かう国道21号線から、岩場に掘られた巨大な顔の彫刻が見える。アメリカ西海岸で見かける奴だ。遠くから見えるので、近づいて正面から写真を撮ろうと、場所を探して見た。ところが、どうやっても、正面からはっきりと撮影できる場所が見つからない。探せば探すほど、どんどん離れてしまう。

仕方が無いので、見当をつけて彫刻のありそうな場所に車を置いて、そこから急斜面を登ることにした。密生する樹木を掻き分けようやく尾根にたどり着いたが、木々で何も見えない。尾根伝いにしばらく歩くと、ホテルのような鉄筋の建物に突き当たる。その周囲をめぐるとまた急傾斜地がある。そこを上りきったら、広いコンクリートの広場が見えてくる。太い蔦に絡まれながら、少し歩くと、右手に彫刻が見えるではないか。ここには、二つの大きなホテル風の建物があり、その一つにこの彫刻の岸壁がかぶせられている。

広い敷地には誰もいない。ここにどうやってくるのだろう。高い場所にあるので、道路の上に橋がかけられている。橋の向こうにも広場があり、建物がある。橋を渡ってみると、そこはアメリカ西部の町、協会や飲み屋、宿屋が軒を並べている。どこまで続くかわからないほど、広いスペースがあり建物もある。

ここに来る人は、誰もいない。入り口が見当らないのだ。急峻な傾斜地を登ってたどり着くか、どこか遠くの入り口を探し当て、ここにたどり着くか、どちらにしても困難だ。彫刻をたどって発見したアメリカ西部のゴーストタウンは、新発見に違いない。