千本松原から1kmほど離れて、沼津港がある。
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港内に軒を連ねる海産物直売所から、重そうな買いもの袋を
抱えて出てきた観光客が大型バスに吸い込まれていくのを見て、
覗いてみることにした。
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直売所の中は、さぞや旬の魚介のオンパレードかと思ったら、どの店も
並ぶは干物や乾物ばかり。

店の大きな水槽には石鯛やカサゴが悠然と泳ぎ、親しみを込めた視線を
送ってくるが、彼らは売りものではない。
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沼津はもともと水産物の加工が盛んなまちなのだ。鯵の干物の生産量
は全国一という。

干物はともかく、黒はんぺんと農家が出していたフキノトウ、この地の
”ブランド”寿太郎みかんには、食指が動いた。

実は、この時すでに、ワクワクするものたちを、私は所持していた。
モクズガ二が何匹かと、
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豆鯵のそのまた豆鯵といった体長5cmくらいの鯵、数10匹。
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先ほど千本松プラザで出会った年配の紳士が、惜しげもなく袋に入れて
お裾分けしてくださったのだ。
モクズガ二 は狩野川の河口に棲むものを冷凍してあり、豆鯵は今朝方の
収穫だそう。
この地に別荘をもち、魚釣りを趣味とするという紳士。頂いた名刺には、
東京の名だたる居酒屋チェーンのオーナーの名が。


帰宅して、モクズガニは味噌汁に、豆鯵は片栗粉を軽くはたいて揚げた。
フキノトウはもちろん、天ぷらに。
少しだけ残った鯵は南蛮漬にした。

ほとんどの食材がいただきもの。でも、まぎれもない旬の食材ばかりだ。
”有り難く”贅沢な食卓となった。
あっという間に平らげてしまったので、写真はなし。


しかし、今、このはるか北の海で起きている未曾有のありさま。
季節ごとに揚がる魚介を楽しみ、営々と続いてきた私たちの食卓は
どうなるのだろうか?