強い西日が降り注ぐ霊仙寺湖の駐車場に、続々と車が集ってくる。
写真
今年、5年目を迎えた薪能の日。なぜか毎回、雨に祟られ、先ほどもザーッと
来たが、一過性だった。


丘を越えて、湖のほとりの会場へ。会場は周囲に黒い幕を張りめぐらせ、
幽玄の世界へのお膳立ては整っている。
飯綱町は謡曲が盛んで、半世紀あまり続く愛好会もある。
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舞台は湖の向こうに妙高と黒姫を遠望する場所に設営され、
解放感にあふれ、高密度な能楽堂とはまったく異なる趣。
客席はりんご箱。木箱ではなくプラスティック製だけど、飯綱町は
りんごの産地なのだ。

客席に腰掛けたものの、容赦なく降り注ぐ強い紫外線を遮るために
サングラスとつば広の帽子は外せない。
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このまま開演したらエチケット違反だ〜と悩んだけれど、どのお客さんも
同じ体勢…暑いですから!^^;

開演時間の午後5時。セミや鳥の声もまだまだ喧しい中、予定どおり、
上手と下手の一対の薪に炎が上がった。
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まずは小学生たちが、おなじみの狂言「附子(ぶす)」を。別荘地帯にある
生徒数40人の私立校だが、ユニークな校風で、生徒たちは熱心に狂言に
取り組んでいるという。
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次は中学生による「浦安の舞」。家内安全、五穀豊穣、商売繁盛を祈るもので、
4人の女性が舞う。
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雅楽は生徒によるア・カペラ。

どちらの演技も、演者に若者にありがちなクスクス笑いもなく、真剣そのもので、
すがすがしい気持になった。

プロによる大蔵流狂言「蝸牛(かぎゅう)」の後、トリは重要無形文化財保持者・
津村 禮次郎氏による「紅葉狩」。
飯綱町にほど近い鬼無里(きなさ)に伝わる平維茂の鬼退治を表現する能で、
背景の樹木は近くの山から伐りだしてきたもの。
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黒姫が夕焼けに輝き始め、囃子が始まった。
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あたりを闇が支配するころ、維茂と鬼の戦いが大団円を迎え…。

(はっ、撮影は禁止だっけ)

途中、片翼の薪の火が消えてしまうハプニングもあったけれど、満ち足りた
気持ちで会場を後にした。
長袖がほしいほど気温が下がっていたことに気づいたのは、帰宅してから
だった。