震災から1カ月が経った。
あの日以来、世界ががらりと変わったような感じで、震災のつい数日
まえに沼津へ行って大きな海を見たことも、狩野川の支流で早咲きの
桜に出合ったことも、ずいぶん前のことのようだ。
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海岸沿いに10kmに渡って続く松林は千本松原と呼ばれ、芹沢光治良、
明石海人、井上靖、本居長世ら多くのアーティストに霊感を与えてきた。
現在では公園になっており、木漏れ日と春風のもと、ひとびとがゆったりと
逍遥していた。
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ねこを驚かせてしまったかしら?
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林に隣接して、「千本プラザ」という建物が。公共施設らしいが、
レストランも併設とあり、お腹がすいていたので中へ。
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入ってびっくり、地階から3階までの3層吹き抜け。
空中を斜めにスロープ状の通路が横切っているさまは、レゾンのご近所
「表参道ヒルズ」のスパイラル・スロープにも、
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以前に建築雑誌で見たスウェーデンの高齢者向け施設とも共通点がある。
車椅子で、館の中のどこへでも自在に行けるバリアフリー設計だ。
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エレベーターはあれど、階段は見当たらない。
陶芸教室や、スタジオなど、集中を要する部屋は独立しているけれど、
通路に出さえすれば、誰がどこにいるか一目瞭然。
ギャラリースペースにはグループ展のひとびとが集まって談笑し、
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スロープで遊ぶ子どもたちもいた。
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世代間の交流機能も旨としており、祭りの神輿や介護機器も随所に
さりげなく展示されている。
見通しのきくオープンな空間は、地域の人の集まる施設にふさわしい。

同館のバルコニーから望む松林。


しかし、松林のあたりは標高3mほど。
まちの中心である沼津市役所では5m。
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堤防のすぐ下には幼稚園(保育園)もある。
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千本松原と海を隔てる堤防の高さをめぐって景観上の議論もあったと聞くが、
今回の大地震で堤防の存在価値は無に等しかった。
複雑な思いだ。
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●「千本プラザ」は1995年竣工の音楽ホール・劇場、大浴場や
高齢者用ケア設備を網羅したコミュニティー施設。